自分で決めた目標だからこそ、超えたい!順位ではなく、自分の目標を追い続けるライフスタイルアスリート 本田 美奈子

自分で決めた目標こそ、
挑戦する価値のあるハードル

横浜トライアスロン(2026)で年代別優勝されたそうですね。

昨年(2025年)の横浜大会は2位だったので、順位としてはステップアップできました。トライアスロンを始めて今年で4シーズン目になりますが、今回の横浜大会は初めて夫に応援に来てもらったんです。これまで毎年、大会の日が子どもの行事と重なっていたため、そちらを優先してもらっていました。でも今年は、「いつまでトライアスロンを続けられるかわからないから、応援に来てほしい」と夫にお願いして、初めて来てもらいました。そんな中で表彰台の頂点に立つことができて、夫がものすごく喜んでくれたんです。その姿を見て、「こんなにも応援してくれていたんだ」と、肌で実感できましたね。私はレースで勝ってもあまり喜ぶタイプではないのですが、毎回メダルを家に持って帰ることは、日頃から私の挑戦を支え、理解してくれている家族に対する感謝の気持ちというか、自分なりの恩返しだと思っています。

優勝されても、順位より「自分で決めた目標」を大切にされているそうですね。

そうですね。目標を決めるのも自分ですし、それを超えるのも自分だと思っています。石垣島と横浜で2連続優勝という結果だけを見れば順調に見えるかもしれませんが、私自身はまったく満足していません。というのも、この1年間、「オリンピックディスタンスで自分が納得いくタイムで走り切る!」という目標を掲げて練習を重ねてきたからです。今回の横浜では昨年より約5分タイムを縮めることはできましたが、目標としていたタイムには届きませんでした。だから、1位になれたことよりも、「達成できなかった」という悔しさや不完全燃焼の気持ちの方が大きいんです。周りの人からすれば「1位なんだからいいじゃない」と思われるかもしれませんが、私が越えたいのは、あくまでも自分で決めた目標なんです。

一人になる時間が欲しくて
走り出したのがきっかけ

学生時代からスポーツをされていたのですか?

中学・高校・大学と、ずっと水球をやっていました。私の地元である新潟県柏崎市は、昔から「水球のまち」として知られていて、今では大手企業がスポンサーにつき、地域を挙げて競技を支えています。水球を始めたきっかけは、中学の時に友達から誘われたことでした。メジャースポーツでは日本代表になるのは難しいかもしれないけれど、競技人口の少ない水球なら、努力次第で日本代表になれるかもしれない、と思って始めましたね。高校では、チーム数が少ないからこそ全国大会を本気で目指す環境で、練習もかなりハードでした。その後、水球の推薦で日本体育大学に進学し、クラブチーム時代にはジュニア日本代表に選ばれたこともあったのですが、大学では日本代表には届きませんでした。でも、この時に「できないことをできるようにするには、自分に何が足りないのか。そのためには何をすればいいのか」を自然と考えられるようになりましたね。その考え方は、今のトライアスロンのトレーニングにも生きていると思います。

大学卒業後もスポーツは続けていたのですか?

大学卒業後は、スポーツからすっかり離れた生活を送っていました。最初はホテルに就職し、その後は証券会社へ転職して営業職に。結婚・出産を経て、本当にスポーツとは無縁の、仕事と家庭だけの生活を送っていたんです。 再び身体を動かそうと思ったのは、今から10年近く前、下の娘が1歳になった頃です。毎日、お店の仕事と育児、家事に追われる中で、母親になると自分だけの時間がまったく取れないことに気がつきました。ふと「一人の時間が欲しい」と思い立ち、近所のスポーツショップで3,000円ほどのランニングシューズを買って、走り始めました。

初めて出場したマラソンでは、悔しい経験をされたそうですね。

走り始めて半年ほど経った頃、地元の柏崎で開催されたマラソン大会に出場しました。当時は月間の走行距離も100kmに満たないくらいで、「まあ、なんとかなるだろう」と甘く考えていたんです。結果は、32km地点でタイムアップ。途中で歩いてしまっていたので当然の結果なのですが、無念のリタイアでした。その時は「もう二度とやらない」と思ったんですけど、後からものすごく悔しさが込み上げてきて。リベンジを決意して、1年後の大会で完走を果たしました。それからは運よく、東京マラソンにも3回(2019年、2022年、2023年)出場しています。最初の東京マラソンは4時間20分台だったのですが、どうしても「サブ4(4時間切り)」を達成したくて、2023年の大会に向けて計画的な練習を積み、3時間40分台で念願のサブ4を達成することができました。

トライアスロンとの出会いを教えてください。

学生時代、水球の日本代表からトライアスロンへ転向された先輩がいたので、競技の存在自体は昔からなんとなく知っていました。大学を卒業する頃には、「いつか挑戦してみたい」という思いが頭の片隅にあったんだと思います。その後、マラソンでサブ4を達成してひと区切りがついた頃、ランニングを通じて知り合った方の中にトライアスロンをやっている方がいて、いろいろ話を聞く機会がありました。話を聞くうちに、「次はトライアスロンをやってみよう」と思うようになったんです。

夫婦で営む人気イタリアンバール

ご夫婦で地域の人気店を営まれているそうですね。

2010年に夫が立ち上げたお店を結婚を契機に手伝うようになって、今年で16周年を迎えました。夫が料理を創り、私がワインの選定と接客・サービスを担当してます。店内18席のアットホームなお店「イタリアンバ―ル・ミラン」として、地域の皆さまに愛されるお店へと育てていくことができました。 2023年にお店を移転し、現在は文京区白山にあるのですが、私がこの移転という大変忙しいタイミングでトライアスロンを始めました。(笑)

お店が終わるのは深夜だと思いますが、どのように競技と両立されているのでしょうか。

お店の営業時間は17時30分から日によって24時までで、私はオープン時間に合わせて出勤します。閉店後の片付けなどもあるので、帰宅するのは深夜になりますね。普段の睡眠時間は毎日5時間あるかないかです。また、私はお店の接客担当、いわば“ママ”なので、お客様からお酒を勧められる場面も多く、ほぼ毎晩お酒を飲みます。これも大切な仕事の一環なので(笑)。「トライアスロンをやっているから、レース前はお酒を飲みません」と言うわけにはいきません。ですから、レースがある週であっても基本的にはお酒をいただきます。仕事を全力でやってこその趣味である、という軸だけは絶対にぶらしたくないんです。

家族との時間を守ることも、私の大切な優先順位

家族、特に娘さんたちは、本田さんの挑戦をどのように見ていますか。

完全に家族の中でも浮いていて、異質物を見るような目で見られていますね(笑)。娘たちに直接「お母さんすごいね」と言われたことはあまりなくて、毎回メダルを持って帰っても、家中にメダルがあるので麻痺しているみたいです。ただ、私は日々の活動をSNSにアップしているのですが、娘の友達が私をフォローしてくれていて、トライアスロンの投稿に「いいね」をしてくれるんです。友達に「お母さんすごいね」と言われると、娘も少し嬉しいみたいですね。面と向かって熱く応援されるような関係ではないですが、言葉ではなく、背中で見せる教育と言いますか、自分が決めた目標に対して必死に泥臭く挑戦し続ける母親の姿を見せることで、彼女たちがこれから生きていく長い人生の中で、何かしらの糧や刺激になってくれればいいな、と思っています。

仕事と家庭、そして競技。この3つを両立させるために、意識されていることはありますか?

私たちの仕事は夕方から深夜にかけてが中心なので、その分、朝の時間と、娘たちが学校から帰ってくる時間は大切にしたいと思っています。火曜日の朝だけは主人にお願いして朝スイムに行かせてもらっていますが、それ以外の日は、朝食を作りながらトレーニングをして、娘たちを起こして学校へ送り出します。そして夕方は、学校や部活動から帰ってくる時間に合わせて、できるだけ家にいるようにしています。私が仕事に出る前のわずかな時間ですが、顔を合わせる時間は大切にしたいんです。 もちろん、トライアスロンのことだけを考えれば、遠征や合宿にももっと参加したいという気持ちはあります。でも、私にとっての優先順位は、まず家族と仕事。その土台があってこそ、競技にも全力で向き合えると思っています。だからこそ、そのバランスはこれからも大切にしていきたいですね。

自分で決めた目標だからこそ、超えたい!

ハードなトレーニング時間は、どのように確保されているのでしょうか。

トレーニングは午前中です。朝6時前からローラーでバイクトレーニングを始め、6時30分からはオンラインでコーチや他の参加者の方とつないで高強度のセッションを行います。その合間に朝食の準備や娘たちを学校へ送り出し、送り出した後はそのままブリックラン(バイク直後のランニング)の流れです。私の休日である火曜日は一番トレーニング時間が長く、早朝の朝スイムの後、そのままバイク、ランニングと続け、4〜5時間ほど体を動かしていますね。また、週に2〜3日は水泳のコーチをしているので、その前後にスイムの自主練習もしています。週5〜6日は何らかのトレーニングをしていて、睡眠時間よりトレーニング時間の方が長くなる日もありますね(笑)。毎日眠いので昼寝は欠かせません。でも、自分に足りない部分を強化するためには必要なことだと思っています。

今シーズン含め、今後の目標を教えてください。

私は土日が仕事なので、基本的には遠征をせず、日帰りで行けるショートのレースに限って出場しています。ですから、アイアンマンのようなロングやミドルのレースに挑戦することは、今の私の環境では現実味がありませんし、考えていません。今シーズンの直近の目標は、宮崎大会で年間チャンピオンになること。今の自分なら可能性はゼロではないと思っています。そして何より、自分が自分に対して課している絶対的なハードル、「オリンピックディスタンスで自分が納得いくタイムで走り切る!」という目標に対して、妥協せず挑戦し続けたいです。その壁を自分の力で超えたとき、自分が一体どんな景色を見て、何を思うのか。その先については、目標をクリアしたその瞬間に、また新しく考えればいいかなと思っています。

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本田 美奈子

私のタイムスケジュール

平日スケジュール
休日スケジュール

私の記録

2026年 ワールドトライアスロンシリーズ横浜大会 年代別優勝
2026年 石垣島トライアスロン 年代別優勝
2025年 千葉シティトライアスロン 女子総合準優勝
2025年 ワールドトライアスロンシリーズ横浜大会 年代別準優勝